建設業の時間外労働の上限規制を守る鍵は、月末の集計ではなく月の途中で累計を見ることです。確認すべき数字は4つあります。単月の時間外+休日労働が100時間未満か、直近2〜6か月の平均が月80時間以内か、年間の時間外が720時間以内か、月45時間超が年6回以内か。この4つを36協定の起算日からの累計で、週1回は把握しておくと、超える前に工程や人員で手を打てます。
■ 建設業の時間外労働の上限規制とは?
建設業では、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されています。原則は月45時間・年360時間、特別条項を結んだ場合でも年720時間以内、休日労働を含めて単月100時間未満、2〜6か月平均で月80時間以内、月45時間を超えられるのは年6回までです。
2026年10月時点で、建設業の時間外労働には次の上限が定められています。災害の復旧・復興の事業については、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の規定が当面適用されないという特例がありますが、年720時間以内などの枠は残ります。
・原則の上限: 時間外労働は月45時間以内、年360時間以内
・特別条項を結んだ場合の上限: 年720時間以内(休日労働は含まない)
・単月の上限: 時間外労働と休日労働の合計が100時間未満
・複数月の上限: 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均をとっても、時間外労働と休日労働の合計が月80時間以内
・回数の上限: 月45時間を超えられるのは年6回まで
ここで混乱しやすいのが、「休日労働を含む数字」と「含まない数字」が混在している点です。年720時間と年6回の判定には休日労働を含めず、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間には休日労働を含めます。つまり、同じ月の残業でも、見る指標によって足す範囲が変わります。
自社の工事が特例の対象になるかどうかを含め、制度の最終的な解釈は所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
■ 36協定と特別条項で決めておくことは?
36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)と特別条項では、起算日、1か月と1年の限度時間、特別条項を使える具体的な事由、超える場合の手続き、対象となる業務や人数を決めます。年720時間と「月45時間超は年6回まで」は、協定に書いた起算日から1年間で数えます。
確認しておきたいのは次の点です。
・起算日: 協定の起算日(1年の数え始めの日)がいつか。年720時間も年6回も、この日から1年で数えます。4月起算と10月起算では、同じ11月でも残り枠がまったく違います。
・限度時間と特別条項の上限: 協定に書いた「1か月◯時間、1年◯時間」が自社の上限です。法律の上限ぎりぎりで協定を結んでいる会社もあれば、法律より低い時間で結んでいる会社もあります。守るべきはまず自社の協定の数字です。
・特別条項を使える理由: 「突発的な工期の変更」「災害時の対応」など、協定に書いた事由に当てはまるときだけ使えます。恒常的な繁忙を理由にできるものではありません。
・手続き: 限度時間を超えるときの手続き(労働者代表への事前申し入れなど)も協定に書きます。書いたとおりに運用し、記録を残す必要があります。
・対象者の範囲: 協定の対象となる業務や人数を確認します。冬だけ増える応援の作業員も、雇用して働いてもらうなら対象です。
年6回の数え方でよく誤解されるのは、「月45時間を超えた月の数」であって「特別条項を実際に使った回数」とは別に数えるものではない、という点です。協定の記載と実際の運用がずれていないか、年に一度は見直してください。
■ 毎月いつ、何を確認すればよい?
上限規制は月末に集計して確認するものではなく、月の途中で累計を見て手を打つものです。中小の建設会社であれば、次の6つの手順を毎月繰り返すと、超過に気づくタイミングを前倒しできます。
1. 月初に、36協定の起算日からの累計を一覧にする。各人の「年間の時間外累計」と「月45時間を超えた回数」を出し、残りの枠を把握します。
2. 法定休日と所定休日の区別を就業規則で確認する。週休2日の会社でも、法定休日は週1日です。どちらの休みに出たかで、休日労働に数えるかどうかが変わります。
3. 週に1回(できれば毎朝)、その月の途中経過を出す。紙の出勤簿を月末にまとめる運用だと、気づいたときには超えています。月の途中で見ることが、上限管理の中心です。
4. 節目で声をかける。実務上は、月40時間前後で本人と職長へ、80時間前後で事務と社長へ、というように段階を決めておくと動きやすくなります。超えてから知らせても手が打てません。
5. 月末に4つの数字を記録して残す。単月の時間外+休日労働、直近2〜6か月の平均、年間の時間外累計、月45時間超の回数。この4つを同じ様式で毎月残すと、翌月の判断が速くなります。
6. 年1回、協定の更新時に実績と協定の内容が合っているかを見直す。
紙やExcelの集計では、3の「月の途中」が抜けやすいのが実情です。開発の中で現場の話を聞いていても、残業の状況が月末の集計まで分からず、上限に近い人への気づきが遅れるという声は少なくありません。
■ 残業時間の数え方で間違えやすいところ
上限規制の集計でつまずきやすいのは、「法定時間外労働」「所定時間外労働」「法定休日労働」の区別です。同じ1か月の数字でも、年720時間と年6回の判定には休日労働を含めず、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間には休日労働を含めて計算します。
以下はすべて架空の例です。所定労働時間を1日8時間・週40時間、法定休日を日曜とします。
ある月、作業員Aさんの残業が次のようになったとします。
・平日の法定時間外労働: 38時間
・土曜(所定休日)の出勤: 8時間 → これは法定休日労働ではなく、週40時間を超えた分が時間外労働になります。仮に全部が超過分なら時間外に8時間加算され、時間外は46時間
・日曜(法定休日)の出勤: 12時間 → 休日労働として別に12時間
このとき、指標ごとの数字はこうなります。
・年720時間の累計に足す数: 46時間(休日労働は含めない)
・月45時間超の回数: 46時間なので「1回」としてカウント
・単月100時間未満の判定: 46+12=58時間
・2〜6か月平均80時間の判定: 58時間を平均計算に使う
同じ1か月でも、46時間と58時間という2つの数字を使い分けることになります。ここを1つの数字で管理すると、年720時間を多めに数えて余裕がないと誤解したり、逆に単月の判定を少なく見積もったりします。
このほか、現場間の移動時間、朝の資材積み込みや点検の時間、手待ち時間の扱いも、労働時間に当たる可能性がある部分です。判断に迷うものは、社会保険労務士や労働基準監督署に確認したうえで、自社のルールとして文書にしておくと集計がぶれません。
■ 上限に近づいた人がいたときの対応と注意点
上限に近づいた人がいた場合は、本人に残業を減らすよう伝えるだけでなく、工程の組み替え・応援の手配・作業の割り振り変更といった会社側の手を同時に検討します。記録に残さない残業に切り替わってしまうことが、いちばん避けたい状態です。
・工程の組み替えを先に検討する。応援の手配、工期の相談、作業の順序変更など、時間を減らす手段を先に並べます。本人の努力で減らせる部分は多くありません。
・持ち帰りや「打刻しない残業」を生まない。上限に近い人に注意だけすると、記録に残らない労働が増えるおそれがあります。記録が実態と合わなくなるほうが、後々大きな問題になります。
・医師の面接指導の仕組みを整えておく。時間外・休日労働が一定時間を超えた労働者には、申出に基づく医師の面接指導の制度があります。要件や手続きは厚生労働省の資料で確認し、社内の窓口を決めておきます。
・年5日の年次有給休暇の取得義務と合わせて見る。残業が多い人ほど有給が取れていないことが多く、両方をまとめて確認すると漏れが減ります。
・記録を3年以上残す。賃金台帳や出勤簿などの保存期間には定めがあります。集計した根拠もあわせて残してください。
・制度の解釈は専門家に確認する。この記事は2026年10月時点の一般的な情報です。自社の協定や就業規則に当てはめた判断は、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご相談ください。
なお、ヤリカタクラウドでは、法定の時間外と休日労働を毎朝集計し、月40・80・100時間の段階で本人・部長・事務・社長に通知します。年720時間、2〜6か月平均80時間、特別条項の回数(年6回)の確認にも対応しています。打刻と日報はLINEなどのトークアプリやスマホのブラウザから送れ、アプリのインストールは不要です。ホームページでは登録なしでデモ画面を操作でき、30日間の無料トライアル(最大5名・全機能)もご用意しています。
■ よくある質問
Q. 36協定を結んでいない月に残業させてしまった場合はどうなりますか?
A. 36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)を結ばず、または届け出ずに法定労働時間を超えて働かせた場合は、労働基準法に抵触する可能性があります。上限規制の枠内かどうか以前の問題になるため、まず協定の有効期間が切れていないか、届出の控えが手元にあるかを確認してください。協定の内容や届出の要否については、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご相談ください。
Q. 代休と振替休日では、上限規制の集計のしかたは変わりますか?
A. あらかじめ休日を振り替えた「振替休日」の場合、働いた日は休日ではなく労働日になるため、法定休日労働としては扱われないのが原則です。一方、休日に働かせた後から休ませる「代休」では、働いた日の休日労働はそのまま残ります。上限規制の集計では両者で数え方が変わるので、就業規則の定めと実際の運用が一致しているかを確認し、判断に迷う場合は専門家にご確認ください。
Q. 役員や職長、一人親方にも上限規制は適用されますか?
A. 労働基準法上の管理監督者に当たる人は、労働時間や休日の規定の適用が除外されるため、時間外労働の上限規制の対象外とされています。ただし役職名があるだけで管理監督者と認められるとは限らず、深夜割増賃金や健康確保のための労働時間の把握は別途必要です。請負で働く一人親方は労働者に当たらないのが原則ですが、実態によって判断が分かれるため、個別には社会保険労務士や労働基準監督署に確認してください。
詳細情報
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Q. 36協定を結んでいない月に残業させてしまった場合はどうなりますか?
A. 36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)を結ばず、または届け出ずに法定労働時間を超えて働かせた場合は、労働基準法に抵触する可能性があります。上限規制の枠内かどうか以前の問題になるため、まず協定の有効期間が切れていないか、届出の控えが手元にあるかを確認してください。協定の内容や届出の要否については、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご相談ください。
Q. 代休と振替休日では、上限規制の集計のしかたは変わりますか?
A. あらかじめ休日を振り替えた「振替休日」の場合、働いた日は休日ではなく労働日になるため、法定休日労働としては扱われないのが原則です。一方、休日に働かせた後から休ませる「代休」では、働いた日の休日労働はそのまま残ります。上限規制の集計では両者で数え方が変わるので、就業規則の定めと実際の運用が一致しているかを確認し、判断に迷う場合は専門家にご確認ください。
Q. 役員や職長、一人親方にも上限規制は適用されますか?
A. 労働基準法上の管理監督者に当たる人は、労働時間や休日の規定の適用が除外されるため、時間外労働の上限規制の対象外とされています。ただし役職名があるだけで管理監督者と認められるとは限らず、深夜割増賃金や健康確保のための労働時間の把握は別途必要です。請負で働く一人親方は労働者に当たらないのが原則ですが、実態によって判断が分かれるため、個別には社会保険労務士や労働基準監督署に確認してください。
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ヤリカタクラウド 開発者/CRE-COMSENCE 代表
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大学在学中にプログラミングに出会い、大学を中退して六本木のIT企業に就職。以来この業界で働き続け、現在はフリーランスのITエンジニアとして独立。業界7年目。チームメンバーとして大手通信会社・大手不動産会社・大手インターネット関連企業などのシステム開発に携わってきた。ホームページ制作のほか、独自CMS、勤怠管理システム、病院の在庫管理システムなどの業務システムを受託開発。ホームページ運用システム「UpNote」を自社で開発・提供し、勤怠・日報・給与計算のクラウドサービス「ヤリカタクラウド」を開発・運営している。2026年1月に千葉から札幌市西区へ移住し、札幌を拠点に活動。
専門領域: 業務システム・Webアプリケーション開発(勤怠管理・日報・給与計算の仕組みづくりを含む)、CMS設計、ホームページ制作・リニューアル、ドメイン・サーバー・SSLの設定と移行、検索エンジン向けの技術的な設定(構造化データ・サイトマップ)
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建設業の時間外労働の上限規制を守る鍵は、月末の集計ではなく月の途中で累計を見ることです。単月・平均・年間・回数の4つの数字と、毎月の確認手順を2026年10月時点の情報で解説します。
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CRE-COMSENCE(札幌市)


